「宝島」(スティーブンスン)①

あまりの面白さに脱帽、良いものはやっぱり良い

「宝島」
(スティーブンスン/村上博基訳)
 光文社古典新訳文庫

元海賊のビリーから
財宝の在処を示した地図を
手に入れたジム少年は、
医師・リヴジーらとともに、
地主・トリローニの入手した
スクーナーで宝島を目指す。
ところが船のコック・
シルヴァーもまた元海賊であり、
船内には不穏な空気が…。

子ども向けの冒険小説と
なめきっていました。
すでに数回読んでいるのですが。
今回再読し、あまりの面白さに
脱帽してしまいました。
良いものはやっぱり良いのです。
本作品は大人が読んでも
十分に楽しめる傑作です。

「宝島」における大人のエンタメ要素①
大胆不敵な主人公・ジム

「主人公が少年だから子ども向け」と
考えるのは浅い読み方です。
このジムは、作者・スティーブンスンが
渾身の力を込めて描きあげた
魅力に溢れています。
反乱の首謀者で元海賊のシルヴァーと
対峙する場面は緊張感が漲ります。
リヴジー医師が中心となっている
正規軍から勝手に抜け出したジムが、
シルヴァー一味に
捕まってしまったときの
啖呵の切り方が味わいどころです。
反乱を知って
反撃の準備をしたのは自分、
錨綱を切ってスクーナーを
流出させたのも自分、
スクーナーの見張りと対決して
それを奪い取ったのも自分。
すべてを告白した後の台詞が圧巻です。
「シルヴァー、ここではきみが、
 いちばん話のわかる人だと思うから
 頼んどくけど、
 ぼくの身になにかあったら、
 ぼくがぶざまな最期だけは
 見せなかったことを、

 ドクターに話してやってほしい。」
悪党を前に、余裕綽々の大胆な態度。
まさに胸がすく思いです。

「宝島」における大人のエンタメ要素②
悪役・シルヴァーにも魅力あり

反乱の首謀者・シルヴァーですが、
彼の立場も微妙です。
手下にした水夫たちが
いつ寝返るかわからないのです。
それでいて上手に立ち回って
裏切りを未然に防いだり、
一時的にリヴジー医師と休戦したり、
ジムと共闘したり、
悪人ながらあっぱれです。

「宝島」における大人のエンタメ要素③
真の悪人は欲に溺れた凡人

では、最も悪人は誰か?
それ以外の凡人水夫たちなのです。
目先の欲に走り船長を裏切って
シルヴァーの謀反に荷担し、
目先の欲に走り
シルヴァーの巧妙な策を台無しにし、
目先の欲に走り
そのシルヴァーさえも簡単に裏切る。
強欲な凡人ほど始末に悪いという
筋書きは、時間と空間を越える
普遍性を保っています。

400頁の本書を、
5回目の再読の今回もまた
一気に読んでしまいました。
やはり面白すぎます。
「宝島なんて」となめきっている貴方、
ぜひご一読ください。

(2019.6.19)

enriquelopezgarreによるPixabayからの画像

2件のコメント

  1. はじめまして。
    宝島の面白さは、私も初めて読み驚愕いたしました。思い出すだけでもゾッとするくらい、どこを切り取っても面白いんですよね。
    あらゆる面白い作品の要素が散りばめられ、「あの面白かった漫画、映画の原点はここにあったのか?!」と思いながら読んだのを懐かしく覚えています。

    1. こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      近年はこうした名作が
      軽視される傾向にあり、
      残念に思っています。
      「宝島」の面白さが
      現代の子どもたちにも伝わることを
      願っている次第です。
      これからどうぞよろしくお願い致します。

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